飲む日焼け止めは紫外線をブロックするわけではない
日焼け止めというと、肌に塗って紫外線そのものをブロックするUVケアのミルクやクリームが真っ先に思い浮かぶと思います。
紫外線が肌へのダメージになる事はもうなかば常識のようになっていますが、日焼け止めクリームやミルクは、紫外線を吸収したり反射したりする事で肌に到達するのを防ぐ事が中心の役割。つまり、紫外線による肌へのダメージを未然に防ぐためのものになっています。
一方、日焼け止めサプリとして販売されているものには、紫外線が肌に届かないようにする効果はありません。
体内に栄養素として取り入れるものなので、当たり前ですが紫外線をブロックする効果は無いのです。
紫外線による「肌のダメージ」を防ぐまたはケアする
では飲む日焼け止めにどういった効果があるのかというと、紫外線そのものではなく、紫外線によって引き起こされる肌のダメージを防いだり、ケアしたりするというもの。
特に、紫外線の影響で発生する活性酸素を無害化する事で肌のダメージを防ぐという効果が中心になっています。
紫外線によって発生する活性酸素
紫外線による肌のダメージは、熱エネルギーによって直接引き起こされるダメージの他に、体内にある酸素を「活性酸素」という人体に有害な成分に変化させる事で引き起こされるダメージがあります。
活性酸素は細胞を傷つけてシワや肌老化の原因となる他、肌への刺激となってメラニンを作り出させる原因ともなります。
飲む日焼け止めが活性酸素を無害化
飲む日焼け止めに含まれる成分は、この活性酸素を無害化する「抗酸化作用」が強い成分が多く、活性酸素を人体に無害な酸素や水にしてしまう事で、日焼けによるダメージを防ぐという効果があります。
あくまでも活性酸素によるダメージの防止や、肌の健康な育成を補助するための目的になりますので、飲む日焼け止めを飲んだからといってそもそも紫外線の熱ダメージを防ぐことにはなりませんので、しっかりとした肌へのダメージ防止やメラニン(シミ)生成そのものを抑えるためには、UVケアクリームなどによる日焼け止めを同時に行う事が必須です。
抗酸化作用などを目的として配合される主要な飲む日焼け止めの成分
実際に、飲む日焼け止めに配合される事が多い成分としては以下のようなものがあります。
ヘリオケアなど医療分野から広まった「フェーンブロック」
飲む日焼け止めが最初に注目されたのは、このフェーンブロックが配合された「ヘリオケア」という商品によるものでした。
フェーンブロックは飲んだ後しばらくの間、高い抗酸化作用によって紫外線の肌に与えるダメージを防いで肌の光老化を防ぐ効果があるとして、世界50ヶ国以上で販売されている「ヘリオケア」の主成分になっています。
実際に引用後の肌へのダメージに対する効果も検証がされていて、日本の医療機関でもアメリカから輸入して提供しているクリニックが多くあります。
ヘリオケアは服用後30分程度で効果が出てきて、4~6時間の間ダメージを軽減できるとされていて、外出の直前に飲む事だけで紫外線ダメージをケアできるという手軽さも人気の理由の一つだと言えます。
(公式では毎日決まった時間での服用を推奨しています)
フェーンブロックはシダ植物から抽出される成分で、最近では「PLエキス」として成分が表記される事も多くなっています。
日傘サプリとして売り出されている「ニュートロックスサン」
ニュートロックスサンは成分名では「シトラス果実及びローズマリー葉エキス末」などと表記されるもので、日傘サプリとして有名です。
日本国内で販売されている飲む日焼け止めの大半はニュートロックスサンを配合したもので、海外で作られて輸入が中心となっているフェーンブロックの商品に対し、日本国内での販売に向けた処方で作られているものが沢山販売されています。
フェーンブロックと同様、高い抗酸化作用によって肌のダメージを防ぐ目的のもので、臨床によって紫外線ダメージを軽減できる事が明らかになっています。
違いとしては、フェーンブロックを配合したヘリオケアが外出の30分前に飲用するというのに対し、ニュートロックスサンは毎日定量を飲み続ける事で肌のダメージを予防できるようになるという点。
しっかりと効果を発揮するために必要な1日の必要摂取量は250㎎以上とされていて、規定量を満たしたものは日傘サプリのマークを利用できるという制度があります。
フェーンブロックもニュートロックスサンも紫外線ダメージの防止については検証がされているので、飲み方の違いやコストなどを考えてどちらかを選ぶようにする形が良いでしょう。
抗酸化作用の代表格「トコフェロール(ビタミンE)」
トコフェロール(ビタミンE)は抗酸化作用を持つ栄養成分の代表格で、活性酸素の中でも特に悪さをしやすい「ヒドロキシラジカル」や「一重項酸素」を無害化するため、美容健康面で重要度が高い栄養です。
また、ビタミンEには肌の炎症を抑える効果もあるため、日焼けによってうけた肌のダメージを回復させて健康に保つという点でも良い効果を発揮します。
肌のダメージケアに効果的な「アスタキサンチン」
抗酸化作用がある成分の中でも、アスタキサンチンは特殊な構造でビタミンEの1000倍の抗酸化作用があるとも言われます。
特殊な性質というのは、多くの成分は細胞(生体膜)の外側か内側のどちらかでしか効果を発揮できないのに対し、アスタキサンチンは非常に長い性質や、外側にも内側にもいる事ができるという性質から、広い範囲で抗酸化作用を発揮できるという面があるためです。
その高い抗酸化作用から、飲む日焼け止めとしての利用以外でも、肌のダメージケアを目的とした製品に多く配合されています。
シミそのものに作用する「L-システイン」
抗酸化作用よりも、シミそのものの色(メラニン)を薄くしたり、予防するといった効果を持つ成分がL-システインです。シミをケアするとして良く知られているハイチオールCなどの主成分でもあります。
L-システインを摂取する事で日焼けによる肌の色変化を抑える事ができるため、飲む日焼け止めサプリに多く配合されています。
抗酸化作用の成分は複数入っている方が良い
上記のように、抗酸化作用を持つ成分には複数の種類があり、この他にも例えばリコピンやビタミンCなど、非常に多くの成分があります。
そして、実は抗酸化作用のある成分は全ての活性酸素に効果を発揮するわけではなく、効果を発揮しやすい種類の活性酸素と、発揮しにくいタイプの活性酸素がそれぞれの抗酸化成分に存在します。
例えば、ビタミンEは「ヒドロキシラジカル」という有害の度合いが強い活性酸素には効果を発揮しやすいものの、「スーパーオキサイドラジカル」という体内で非常に多く生成される活性酸素には効果が薄いなど、成分ごとの特性があるのです。
そのため、抗酸化作用がある成分は一つだけではなく、複数の種類が沢山配合されている事が、飲む日焼けどめとしての効果を高めるために重要となります。
単体の成分量だけではなく、複合的な効果を比較しながら、一番良い商品を選んでみてください。
公表されている日焼け止め効果に注意
ここまで飲む日焼け止めについて紹介しましたが、注意点としては世の中で公表されている様々な情報の中には、飲む日焼け止めの引用で「紫外線が56%カットできる」というようなものもありますが、これは完全な間違いという事。
紹介した飲む日焼け止めで利用される主要な二つの成分、フェーンブロックとニュートロックスサンは、臨床によってある程度「日焼けによる肌のダメージ防止」に対する効果が実証されていますが、検証されているMEDという数値は、肌がダメージを受ける(炎症を引き起こす)までに必要となる紫外線量を示す数値であって、紫外線をカットする割合ではありません。
MEDが100%上昇という事であれば、肌が2倍の紫外線を受けるまで炎症を引き起こさなくなるという意味。ニュートロックスサンであれば最大でMEDが56%まで上昇という事なので、紫外線を56%カットするのではなく、肌が炎症を引き起こすまでに耐えられる紫外線量が56%増加するという事になります。
塗る日焼け止めの効果はMEDで言えば200%以上
塗る日焼け止めにはSPFという数値がありますが、このSPFというのは肌が炎症を引き起こすまでにかかる時間の長さ(紫外線量)を何倍にできるかというもので、SPF2であれば紫外線量が倍になるまで耐えられるという事。
つまり、MEDに換算するならSPF2=MED100%上昇という意味になります。
塗るタイプの日焼け止めの場合、殆どの商品はSPF10以上で、最近ではUVケア効果のある化粧下地などでもそれ以上のSPF値を発揮していますので、紫外線で炎症が引き起こされるのを防止するという点で塗る日焼け止めと比較すれば、飲む日焼け止めの効果は殆どないようなものだと言えます。
飲む日焼け止めはあくまで活性酸素による肌のダメージを軽減し、肌が健康的に保たれるようにするものですので、健康的な美肌を目指す補助としての利用には良いのですが、塗る日焼け止めなどの代わりとして利用する事は出来ませんので、注意しましょう。
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