セラミドとは
そもそも何故セラミドが保湿成分として重宝されるのかというと、セラミドが元々人の肌に存在している一番重要な保湿成分そのものだから。
肌の保湿機能には、大きく分けて
- 肌の細胞と細胞の間に潤いを保つ「細胞間脂質」
- 肌の細胞の中で潤いを保つ「NMF(天然保湿因子)」
- 肌の表面を覆って、水分の蒸発を防ぐ「皮脂膜」
という3つがありますが、この中で特に肌の保湿ケアに重要となる「細胞間脂質」の半分を占める成分が、このセラミドなのです。
水分を「脂」で挟み込む特殊な構造で保湿&高いバリア機能を発揮
セラミドが細胞間脂質として保湿にとって特に重要となる理由の一つが、「ラメラ構造」と呼ばれる特殊な形での構成。
ラメラ構造とは、水分とセラミドなどの脂分が交互交互に積み重なる事で、肌の内部から水分が逃げられない状態を作り、更に肌の外部から刺激となる成分が侵入できない強固なバリアとして働くもの。
多くの成分は「水に溶ける」か「脂にとける」のどちらかの性質を持っているのですが、水と脂が交互に並べる事でそのどちらも肌に侵入する事を出来なくして、肌を守っているのです。
セラミドが不足してしまうとこの肌の水分保持とバリア機能が低下してしまうため、例えば化粧品に配合される保存料や、細菌などによるダメージを受けやすくなってしまいます。
実際、アトピー肌や敏感肌などダメージを受けやすい肌になってしまう大きな原因の一つは肌のセラミド不足で、セラミドが十分に存在する肌であれば健康的で美しい肌が保たれやすくなります。
セラミドは加齢やストレスで減少
そんな保湿にとって重要な役割のセラミドですが、セラミドは肌のターンオーバーによって作られるため、加齢やストレスなどによって肌のターンオーバーが乱れると、肌の中のセラミドの分量も減少してしまいます。
セラミドが減ると肌が潤いを保てず、ダメージを受けやすくなり、更にターンオーバーが乱れてセラミドが減少という悪循環に。だからこそ、しっかりとケアを行って肌の中にあるセラミドの分量を保持する事が大切なのです。
同じ体内に存在する他の保湿成分との違い
よくコスメに配合されている成分では、人の体内に元々存在する成分だから安全性が高いとして、ヒアルロン酸やコラーゲンなども保湿成分として多く利用されています。
ヒアルロン酸は関節などに多く存在している成分で、保湿というよりも体内の動きをスムーズにするクッション材などとして活躍している成分。
肌の中で元々保湿のために活躍しているというわけではありませんので、セラミドのように肌に元々存在する保湿成分を補うという形では利用できません。
しかし、ヒアルロン酸は現在の技術でとても小さい分子レベルにナノ化される事が可能で、角質層の内部に浸透させる事が可能な保湿成分の一つ。
角質内部でしっかりと水分を維持するという働きが出来れば「細胞間脂質」の補助として有効に働きますので、肌の保湿としては高い効果を発揮できます。
また、コラーゲンも元々体内に存在し、肌の内部にある成分ですが、コラーゲンがあるのは真皮層という肌の奥の方。コラーゲンは真皮で肌のハリを作る成分として有名ですね。
コラーゲンを肌の上から塗っても、それこそ細胞間脂質などによって侵入を阻まれるため、真皮に届く事はありませんし、届いてもそのまま肌にハリを作る成分として利用されるわけではありません。
ただ、コラーゲンもナノ化などによって角質層への浸透技術は向上していますので、ヒアルロン酸と同様、細胞間脂質の補助として有効に働かせる事は可能です。
セラミドの種類
セラミドには、原料による種類の違い、働きによる種類の違い、そしてより細かな構造による違いで細かな効果の違いがあります。
原料によるセラミドの種類分け
まず、一口にセラミドといっても、その原料によって大きく下記の4つの種類に分かれます。
- 植物などから抽出された「植物性セラミド」
- 馬などの動物から抽出された「天然セラミド」
- 科学的に合成した「合成セラミド」
- 人の肌に存在するものと同じ構造の「ヒトセラミド」
これらは「セラミド」という成分の働きとしては一緒であるものの、肌に対する保湿性能にはやはり差があり、特に人の肌に元々存在するヒトセラミドは肌への負担もなく利用できて、保湿性能も高いという形になっています。
他のタイプのセラミドも勿論高い保湿性能をもってはいるのですが、どれが一番というものではなく、原料によってそれぞれ差があるので実際に利用して効果を確かめてみる必要があります。
ヒトセラミドはその機能でいくつかに分かれる
また、セラミドの内ヒトセラミドについては、成分の機能によって「セラミド1」のような数字または「セラミドAP」などのようにアルファベットが追加された形で分類されます。
これはセラミドを構成するいくつかの分子が、どのような形でくっついているかによって変わるもので、セラミド1は保湿や外部からのダメージ保護に強く、セラミド6はターンオーバー促進などそれぞれ少し違った役割を持つ形となります。
数字表記とアルファベット表記については、元々はセラミドの分類が見つかった順番で数字をつけていたものが、構成成分によってアルファベットを付けるようになったというものなので、別物というわけではありません。
これは化粧品の成分表示について調整が行われた結果によるもので、今後はアルファベット表記が主流となっていくでしょう。
細かい構造によって更に分かれるセラミド
以上の違いがセラミドの種類として一般的によく知られているものになりますが、実はセラミドはその構造の細かな違いによっても更に効果が変わってきます。
その違いが、セラミドの「長さ」。
セラミドはそもそも、化学的に言えば「スフィンゴシンと脂肪酸が結合したものの総称」であり、セラミドの材料となるスフィンゴシンや脂肪酸の種類によって、セラミド1などの分類がされています。
しかし、例えば同じタイプの脂肪酸でも、短鎖型と長鎖型の脂肪酸という違いがあり、短鎖型の脂肪酸で作られたセラミドは「短く」なり、長鎖型の脂肪酸で作られたセラミドは「長く」なります。
そして、実はこの長さの違いがあると、肌への定着率も大きく変わってくるのです。
短いセラミドの場合は、肌に塗っても洗顔などしてしまえばすぐにまた流れてしまいますが、長いセラミドであれば洗顔などをしてもある程度残り続けるため、少しずつ肌のセラミド量を増やしていく事が可能とされています。
また、アトピーなどの場合にはセラミドが少なくなってしまうと紹介しましたが、肌トラブルを抱えている場合に減少しやすいセラミドは特にこの「長鎖型の脂肪酸によるセラミド」。
そのため、長鎖型のセラミドが減少している肌にいくら短鎖型の短いセラミドを足しても、肌は中々改善されません。
このように、成分表記的には同じセラミドであっても、細かい部分での差が出てくるため、理想とするセラミドが配合された商品を探すためには色々な角度で商品を比較するようにしましょう。
保湿成分セラミドは顔以外にも効果的
セラミドは肌であればどこでも存在している成分ですので、顔のケア以外でももちろん有効です。
特に、食器洗いなどによって荒れてしまった手の肌などは、セラミドの量が減少している事が多いため、スペシャルケアとして一日一回、セラミドが配合されたクリームなどを利用すると良いでしょう。
また、肌以外では髪などに対しても保湿としての機能では働かせる事が出来ます。
ただし、髪の構造は肌の構造と大きく異なり、キューティクルをしっかりと閉じて保護するというケアが重要になりますので、セラミドよりもオイルなどでのケアを行った方が良いでしょう。
同様に、爪のケアについてもセラミドでケアを行うより、専用のケアオイルなどを利用した方が、良いケアを行いやすいといえます。
セラミドの生成を促す食べ物
セラミドは単体で合成されるものではなく、肌細胞がターンオーバーによって作られていく過程で作り出されるもの。
肌のターンオーバーの順序としては、
基底層で新しい角質細胞が作られる→角質細胞が肌表面に押し出される→角質細胞の中身が排出され、死んだ細胞となる→垢として剥がれ落ちる
というものですが、この「角質細胞の中身が排出」された結果として作られるものがセラミドなどの細胞間脂質。
つまり、セラミドを増やそうとする事は基本的に無意味で、肌のターンオーバーを促して、新しい角質細胞が適切に作られるようにする事が、セラミドを増やすために重要となります。
肌のターンオーバーが行われるためには、タンパク質や脂肪酸といった肌細胞の材料となる栄養素の他、肌の代謝を適切に保つビタミンB群やビタミンE、亜鉛などの栄養素をしっかりと摂取する事が重要。
食べ物で言えば、豚肉などでタンパク質を摂取し、オリーブオイルなどで必須脂肪酸を摂取。果物や海藻類でビタミンやミネラルを摂取というような形を取ると、肌の代謝を適切に保ち、結果としてセラミドを増やす事に繋がります。
セラミド高配合の化粧品の選び方
セラミドが多く配合された化粧品を利用する事は、保湿という点ではとても有効。
ただ、問題点としては、実際に配合されているセラミドの分量や種類というものが、殆どの場合で消費者が知る事は出来ないという点です。
一つの目安としては化粧品に表記された成分表で、成分表は基本的に配合分量の多いもの順に記載されているため、成分表の前半に「セラミドAP」などの表示があれば、セラミドが多く配合されている可能性がある製品だと言えます。
もう一つの目安としては、メーカーなどによって公表されている数値で、実際にどのていどの割合でセラミドが配合されているかという表示。有効成分の量がそのまま効果の高さにつながる商品ですので、配合分量が明記されているものも多く存在し、そういったものの中から選ぶのも一つの手です。
しかし、この判断方法には実は2点問題があります。
配合量1%以下の成分は順不同
一つ目の問題は、化粧品の成分表は配合量が1%に満たないものについては、メーカーの任意で順序を決められるという事。
化粧品は大部分が水などの基材であったり、グリセリンなどの安価な保湿成分である場合が多く、有効成分は1%にも満たない商品が大部分。というよりも、美容成分の多くは肌にたいする効力が高いため、配合しすぎるのもかえって肌トラブルの原因となってしまうため、あまり多くは配合できないのです。
つまり、成分表の前半に書かれていても、その他多くの成分と共に配合量が1%以下という場合があるため、正確に配合量を見抜ける方法ではないのです。
美容成分の量と、配合量は異なる
二つ目の問題が配合されている原料によって、本当に効果がある美容成分の分量は異なるという点です。
ややこしいのですが、例えばセラミドでいえば本当の有効成分はスフィンゴシンと脂肪酸が結合した、固体としての成分。
しかし、固体のままでは取り扱いが難しいので、化粧品に配合される際はこの固体を水などに溶かした液体の原料にして利用します。
そして、問題となるのがコスメに表記される配合量が、多くの場合でこの原料の配合量だという事。
最も分かりやすいのが「原液」のコスメで、美容成分が10%配合された原料を100%利用していても、美容成分が50%配合された原料を100%利用していても、同じ原液コスメとして販売されていたりします。
当然の事ながら、肌の保湿に影響するのは美容成分の方ですので、美容成分の少ない原料が利用されていればその効果はあまり感じる事ができません。
こればかりはどのような原料が利用されているかなど、製造元に確認をしなくては判断する事が出来ない部分ですので、基本的には成分表やメーカーが発信する情報を参考にしつつ、自分自身の肌に合うと思うものを選ぶというスタンスが、結局のところ消費者が取れる最善の行動ではないでしょうか。
セラミドをしっかりと活用する事は、肌の保湿ケアを何倍にも高めて美しさを手に入れるためにとても有効です。
まだまだ高いコスメも多いですが、それだけの価値がある商品も多くありますので、肌の乾燥に悩んでいるようであれば是非一度試してみてはいかがでしょうか。