活性酸素は体の細胞を傷つける
酸素は人が生きていくためには欠かせない物質。人は呼吸によって酸素を体内に取り入れ、酸素を利用して生きていくためのエネルギーを作り出しています。
この体内に取り入れた酸素が、色々な状況の変化によって有害化したものが「活性酸素」なのですが、決して酸素よりも良い働きをするという意味での「活性」ではありません。
鉄などの金属がさびてボロボロになる事を「酸化」といいますが、活性酸素はこの酸化を体内でも引き起こしてしまい、これが原因で肌の老化や場合によってはガンなどのトラブルまで引き起こされます。
活性酸素が有害な理由と、活性酸素の主な種類
何故活性酸素が体にとって有害になるかというと、これは酸素の持つ性質に原因があります。
今回は分かりやすくするため、酸素や活性酸素を“双子の兄弟”に例えて紹介します。
(たとえ話にするため、厳密に言えば多少間違った解釈部分もあります)
活性酸素になる前の「酸素」の状態
酸素は化学式では「O」と表記される酸素原子が2つ繋がったもので、O₂と表記されるもの。
酸素は仲の良い双子が手を繋いだ状態でいると考えて下さい。
双子の服にはそれぞれポケットが2つついていて、一つずつお菓子(電子)が入っている状態が、普段私達が呼吸で取り入れている酸素の状態です。
酸素の状態では双子は気持ちが安定しているので、悪さをする事はありません。
取り込んだ酸素の2%がなる「スーパーオキサイドラジカル」
人の体の中には、生存に必要なエネルギーを作り出す「ミトコンドリア」というものが沢山あります。酸素はこのエネルギーを作り出す手伝いをしているのですが、たまにミトコンドリアからお菓子を一つだけもらえます。
すると、双子の内の一人だけが、両方のポケットにお菓子を持っている状態になってしまいますよね。
最初は気持ちが安定していた酸素の双子も、片方だけがお菓子を二つもった事で、もう一人がちょっとすねてしまいます。
気持ちが少し荒れているので、誰かが持っているお菓子を奪い取ろうとし始めるのです。
この時、実際に細胞から酸素がお菓子を奪い取ってしまうと、細胞がダメージを受ける事になります。
この状態が「O₂-」と表記される状態で、「スーパーオキサイドラジカル」と呼ばれる活性酸素の状態。体内に取り入れられた酸素の2%がこの変化を起こすため、量としてもかなり多い特徴があります。
スーパーオキサイドラジカルは「過酸化水素」に変化する
この不安定な状態だといつ悪さをするか分からないので、体内にいる「スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)」という酵素は、お菓子をもう一つこの双子に渡してあげる働きをします。
するとこの双子はお互いに二つずつお菓子を持っている状態になって安定するのですが、今度はもっとお菓子が欲しいとワガママを言い始めます。
この状態が「過酸化水素(H2O2)」と呼ばれる状態です。
すぐに悪さをする事はないのですが、そのまま放置しておくと危ないので、「カタラーゼ」や「ペルオキシターゼ」という酵素によって二人ともお菓子を一つずつ没収されて、水と元の酸素の状態に戻らされるものもあります。
過酸化水素は凶悪な「ヒドロキシラジカル」に
過酸化水素はまだそこまで害が無かったのですが、双子がとても魅力的なおもちゃ(金属イオン)を見つけると、状況が変わり始めます。
双子はそれぞれ持っていたお菓子を一つずつ支払って、おもちゃを購入します。この時、今まで手を繋いでいた二人が手を放して別々に過ごすようになってしまいます。
双子は一緒にいないと気持ちが安定しないので、気持ちがとても荒んでしまいます。その結果、気持ちを安定させるためにお菓子を奪おうとだれかれ構わず周囲を攻撃するようになるのです。
この状態が「ヒドロキシラジカル」といった状態で、とても攻撃性が強いため肌へのダメージが大きく、肌の老化やガンなどの原因になりやすい物質です。
ヒドロキシラジカルになると、すぐに周囲からお菓子を奪って安定化を図るため、存在している時間は100万分の1秒ととても短い時間です。
紫外線などの影響で出来る「一重項酸素」
このヒドロキシラジカルと同じくらい凶暴化してしまうパターンが、「一重項酸素」と呼ばれる状態です。
こちらは酸素の双子が普通に過ごしているところに、紫外線が悪さをして双子が持っているお菓子を取り去ってしまう事で発生します。
双子が一つずつもっていたお菓子すらなくなってしまうと、双子も暴れて周囲から力づくでお菓子を奪おうとしはじめます。
紫外線による肌ダメージの原因になる要素の一つで、シミなど肌トラブルを引き起こす主な原因とも言えます。
抗酸化作用とは、活性酸素を安定させる行為
美容や健康分野で「抗酸化作用」が売り文句にされるケースが多くありますが、この抗酸化作用とは簡単にいえば上記で紹介したような「活性酸素」に、お菓子(電子)をあげて、悪さをしない安定した状態にしてあげる事です。
最初に出来る活性酸素「スーパーオキサイドラジカル」は「SOD」によって安定した「過酸化水素」に変化すると書きましたが、これと同じ作用を引き起こす成分が、抗酸化作用のある成分という事になります。
活性酸素の種類によって効果がある抗酸化作用は異なる
抗酸化作用と一口にいっても、活性酸素の状態によって効果を発揮するものとしないものに別れます。
例えば、抗酸化作用の主力ともいえる「ビタミンC」は、凶暴化した「ヒドロキシラジカル」には効果がありませんし、逆にポリフェノールの一種である「フラボノイド」はヒドロキシラジカルにしか効果がありません。
そのため、抗酸化作用は一つの種類を沢山とるのではなく、色々な種類をバランスよく取り入れる事が、活性酸素を無力化するために大切なのです。
活性酸素は健康の維持に使われる事も
ここまでは活性酸素が体に有害なものとして紹介してきましたが、実は健康のために有益な働きをする面もあります。
その例の一つが、体内に侵入してきた細菌を殺菌する作用で、特に「過酸化水素」が主力として働きます。細胞を傷つける働きが自分の体内に向いてしまえばダメージになり、外敵にむかえば健康維持になるのです。
つまり、活性酸素は全てが悪いものではなく、過剰に存在してしまう事が一番の問題。
活性酸素を適度な量に抑えるためには、体内で活性酸素を無害化する酵素などを十分に取り入れておく事が大切なので、そのためにはなるべくレトルトやインスタント食品ではなく、生の野菜など自然のものをしっかりと摂り入れ、健康的な食生活を送る事が重要です。
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